「もち」という言葉を漢字で書くとき、多くの人は「餅」を思い浮かべるでしょう。
しかし、実は「餅」には旧字体である「餠」も存在します。
現代ではほとんど見かけないこの漢字も、日本の歴史や文化と深く関わってきました。
本記事では、「餅」と「餠」の違いと成り立ち、現代における使い分けのポイントを分かりやすく解説します。
また、餅にまつわる文化や地域ごとの食べ方、関連する和菓子や料理用語についても触れ、日本語と食文化の魅力を存分にお届けします。
餅と餠、「もち」の漢字はどっちが正しい?【結論とポイント先出し】

「もち」を表す漢字には、「餅」と「餠」という2種類が存在します。
現代日本語では主に「餅」が日常的に用いられており、新聞・雑誌・公式文書など幅広い媒体で定着しています。
国語辞典や漢字検定などの標準的な資料においても「餅」が正式な表記として採用されており、多くの日本人にとってはこちらがなじみ深い形です。
一方で「餠」は旧字体にあたる漢字で、戦前の公文書や古典文学、歴史資料などで目にすることができます。
現在でも伝統芸能の題字や歴史的背景を重んじる作品、また毛筆書道の題材など、特定の場面では依然として用いられています。
日本語で「もち」を表す漢字は2つ存在する理由
漢字は古代中国から日本へ伝来しましたが、その後の長い歴史の中で日本独自の書き方や字体の簡略化が進みました。
「餠」は中国における本来の形を保った旧字体であり、細部まで複雑な構造を持っています。
それに対して「餅」は戦後の当用漢字制定の流れで生まれた新字体で、画数や形を簡略化し、読みやすさ・書きやすさを重視しています。
なお、旧字体が誤りというわけではなく、あくまで新字体が現代日本語の標準として位置付けられただけです。
現代に正解はある?漢字専門家の見解
漢字研究の専門家によれば、現代の日本語環境においては「餅」を使うのが公式かつ一般的であり、教育や出版の場面でもほぼ例外なくこちらが採用されています。
しかし「餠」も歴史的価値や文化的背景を有する正しい漢字であり、特に伝統文化や古文書の世界ではその存在意義が残されています。
したがって、日常の文章では「餅」を用い、歴史や文化を意識した文章や美術作品では「餠」を選ぶなど、用途や文脈に応じた使い分けが望ましいとされています。
「餅」と「餠」:漢字それぞれの成り立ち・意味

『食へん』が意味するものと部首の豆知識
両方の漢字とも「食べ物」や飲食に関する意味を持つ『食へん』が使われています。
『食へん』は食事や料理に関連する多くの漢字に共通する部首で、例えば「飯」「飴」「飲」などもこの部首を持ちます。
古くからこの部首は「口に入れるもの」や「食に関する行為」を示す象徴として用いられ、日本語に限らず漢字文化圏全体で重要な位置を占めています。
また、『食へん』の形は古代にはより複雑で、左側の「飠」から簡略化して現代の形に落ち着いたという経緯があります。
旧字と新字体の違いと「餠」と「餅」の関係
「餠」は旧字体で、右側の部分が完全な「并」となっており、画数も多く、左右のバランスがやや縦長になります。
そのため筆で書く際には全体が引き締まった印象になります。
一方、「餅」は新字体で、右側の部分が「并」を簡略化した形となり、画数が減って書きやすくなっています。
活字でも横幅がやや広く見えるため、現代の印刷やデジタル表示にも適しています。
中国語・日本語における意味・使い方の違い
中国語における「餅(繁体字)/饼(簡体字)」は、日本語の「もち」とは異なり、主に小麦粉を原料とした薄く平たい食品全般を指します。
例えば中華風のネギ餅や月餅などがこれに含まれます。
一方、日本語では「餅」といえば基本的にもち米を蒸して搗いた弾力のある和食を指し、お正月の鏡餅や磯辺焼きなどが代表例です。
このように、同じ漢字でも文化や地域によって指す食べ物やイメージが大きく異なる点は、漢字の面白さの一つといえます。
餅の漢字の手書き・書き方完全ガイド

「餅」漢字の正しい書き順と部首解説
「餅」はまず左側に『食へん』を書きますが、この部首は横画・縦画・点の順に丁寧に整え、全体のバランスを意識することが重要です。
続いて右側には「并」の簡略形を配置しますが、この部分は最初に縦画を引き、その後に横画や斜めの払いを入れることで美しく仕上がります。
筆順は左から右、上から下が基本で、最後の払いを勢いよく描くと、全体の見栄えがよくなります。
特に毛筆では、左の『食へん』と右の簡略形が均等になるよう意識すると、安定感のある文字になります。
旧字体「餠」の書き方・特徴はどこが違う?
「餠」は右側が完全な「并」で構成されており、画数が多く、横画と縦画の組み合わせが複雑です。
そのため、筆順は「餅」と基本的に同じでも、右側の「并」を正確に描くためには線の交差点の位置や角度に注意が必要です。
書き手によっては、旧字体特有の縦長のバランスを意識して配置し、全体に締まった印象を与えます。
歴史的文献や毛筆書道では、この旧字体ならではの格調高さが好まれることがあります。
漢検対策:「餅」書き方・読み方のポイント
漢検の出題では、新字体「餅」が使用されるのが通例です。
読みは訓読みで「もち」、音読みで「ヘイ」があり、音読みは日常ではあまり使われませんが、「餅米(ヘイベイ)」のような語で登場します。
熟語の代表例には「餅つき」「切り餅」のほか、「丸餅」「鏡餅」などもあります。
学習時には正しい筆順を覚えるだけでなく、書き終わった際に全体の左右の幅やバランスが整っているか確認することが、高得点につながります。
餅に関連する漢字・用語の種類と使い分け

「もち米」「おもち」「わらび粉」など表現の広がり
「もち米」は餅の原料として最も一般的で、粒の粘りや甘みが強く、餅らしい弾力を生み出します。
また「おもち」という表現は、出来上がった餅を親しみを込めて呼ぶ日常語であり、家庭や行事で頻繁に使われます。
さらに「わらび餅」は本来わらび粉を用いたぷるんとした食感の和菓子で、夏の涼菓としても有名です。
ほかにも「求肥」は餅の一種で、やわらかく伸びのある食感を活かし、大福や包み菓子の皮として使われます。
このように、餅の派生や応用によって幅広い菓子や料理が誕生し、それぞれの食感や風味が楽しまれています。
餅にまつわるほかの和食や料理用語
「鏡餅」は正月飾りとして二段重ねにした丸餅で、年神様を迎える神聖な供え物です。
「草餅」は春の訪れを感じさせる蓬を練り込んだ餅で、香りと色が特徴です。
「大福」は餅で餡を包んだ菓子で、季節ごとの具材や味付けのバリエーションが豊富です。
これらは単なる食品名にとどまらず、年中行事や季節感、地域の食文化とも深く結びついています。
餅の歴史と日本文化―正月・餅つき・東西の違い

餅つきの文化的意味と日本独自の発展
餅つきは古来より日本全国で行われてきた年中行事で、単に餅を作るだけではなく、五穀豊穣や家内安全、地域の結束を祈る意味が込められています。
かつては秋の収穫祭や正月前の準備として行われ、家族や近隣が集まり、掛け声を合わせながら臼と杵で餅を搗く光景が見られました。
この行為には、食材への感謝や人と人との絆を深める役割もあり、特に子どもたちにとっては季節の風物詩として記憶に残る大切な時間でした。
現代でも地域のイベントや学校行事、観光イベントなどで餅つきが行われ、日本の伝統文化を体験できる場として受け継がれています。
関西・東京で異なるお餅の種類と食べ方
関西では丸餅が主流で、やわらかく煮ても形を保ちやすく、主に白味噌仕立ての雑煮に入れられます。
東京を含む関東では角餅が一般的で、四角く切り分けてから焼くことで香ばしさが引き立ち、すまし汁の雑煮に合わせることが多いです。
具材や味付けも地域によって異なり、関西は甘みのある白味噌仕立て、関東はあっさりとした醤油ベースが多く、同じ「雑煮」でもまったく異なる味わいになります。
これらの違いは、地域の気候や食文化の歴史に深く根ざしています。
きな粉・醤油・黒蜜…餅料理バリエーション
砂糖きな粉餅は甘みと香ばしさが楽しめる定番のおやつで、子どもから大人まで幅広く人気があります。
醤油焼き餅は焼きたての香ばしさと醤油のしょっぱさが絶妙で、寒い季節の軽食として喜ばれます。
黒蜜をかけた餅やあんこを添えた餅は、和菓子としてお茶うけに最適です。
さらに海苔を巻いた磯辺焼きや、胡麻餅、ずんだ餅など、地域や家庭ごとに多彩なアレンジが存在します。
こうしたバリエーションは、日本人の餅への愛情と創意工夫の豊かさを物語っています。
餅の原材料・種類・食感の違い:デンプン・小麦粉も解説

もち米の食感と材料による種類分け
もち米は粘りが非常に強く、噛むとしっとりとした弾力があり、冷めても硬くなりにくいという特徴を持ちます。
そのため、餅や赤飯、大福などの和菓子のほか、地方によっては祝い事や祭事の特別な料理にも使われます。
粒の甘みが豊かで、口に入れるとほのかな香りとともにもちもち感が広がるのが魅力です。
また、精米度や産地によって微妙に食感や風味が異なるため、料理や菓子作りでは銘柄や品質を選び分ける楽しみもあります。
わらび粉・小麦粉・デンプン餅の特徴比較
わらび餅は本来わらび粉から作られるもので、独特の透明感とぷるんとした柔らかい食感が特徴です。
冷やして黒蜜やきな粉をかけると、夏の涼菓として格別の味わいになります。
小麦粉餅は小麦粉を練って蒸したり焼いたりするもので、もち米とは異なるやや弾力のある歯ごたえを持ち、地方菓子やおやつとして親しまれています。
デンプン餅はタピオカ粉や片栗粉などのデンプンを原料とし、軽い口当たりともちもち感があり、カラフルなアレンジやフルーツとの組み合わせにも適しています。
それぞれの原料と製法の違いが食感や風味に大きく影響し、用途や季節に応じて使い分けられています。
よくある疑問Q\&A|餅の漢字・材料・辞書の使い方まで

「餅」と「餠」、実際はどちらを使うべき?
日常的な文章や公式な文書、新聞・雑誌といった一般的な媒体では「餅」を使うことが推奨されます。
これは戦後の漢字制限や新字体の普及により、多くの人が読み書きしやすい形として「餅」が定着したためです。
一方、歴史的文脈や古典文学、美術作品、書道作品などでは旧字体の「餠」が選ばれることも少なくありません。
この場合は、伝統や格調の高さを意識した演出として、あえて旧字体を用いることで独特の雰囲気を生み出します。
また、和菓子屋や旅館などの屋号や商品名にも、昔ながらの趣を出すため「餠」が採用されるケースがあります。
辞書や漢検での記載・今後の動向展望
主要な国語辞典や漢字検定では、新字体「餅」が標準表記として採用されており、漢検の試験問題でもこの字体が使用されます。
ただし、書道界や古典文学の分野では旧字体への関心が根強く、一部の専門書や資料では「餠」を掲載している例も見られます。
近年では、歴史や文化の学習の一環として旧字体を学ぶ機会が学校や文化教室で提供されることも増えてきました。
そのため、将来的には「餅」と「餠」の両方を知り、場面や目的に応じて適切に使い分ける能力が、より広く求められる可能性があります。
まとめ:あなたに合った「もち」漢字・食べ方・豆知識

「餅」と「餠」、どちらも長い歴史と豊かな背景を持つ日本文化の大切な一部です。
それぞれの漢字には形や成り立ちだけでなく、時代ごとの暮らしや価値観、食文化の変遷が映し出されています。
状況や目的に応じて使い分けることで、単なる表記の選択以上に、言葉に込められた意味や情緒を表現することができます。
さらに、文字そのものの造形美や響きに注目すれば、漢字と食文化の関係をより深く味わうことができます。
こうして、言葉の奥深さとともに、お餅そのものの美味しさや文化的な価値も一層堪能できるでしょう。
現代では「餅」が標準的な表記として広く使われていますが、「餠」もまた長い歴史を持つ漢字であり、文化的・美術的な価値を有しています。
旧字体である「餠」は、その形の中に時代ごとの文字の変遷や筆使いの美しさが込められており、書道や伝統文化の場面では特別な存在感を放ちます。
両方の漢字を知っておくことで、日本語の表記の幅が広がるだけでなく、文字の背景にある文化や歴史への理解もより深まります。
さらに、日常的な使用と文化的な使用を適切に使い分けることによって、日本語と食文化の魅力をより豊かに味わうことができます。

